宮部みゆきさん、辻村深月さん、薬丸岳さん、東山彰良さん、宮内悠介さんの5人の人気作家さんによる伝奇系アンソロジーです。ホラーだったり、ミステリだったりするけれど、どれも伝奇系です。
タイトルは、作家さんたちの頭文字からのようです。
5人中4人は、好きな作家さんだったので、手に取ったのですが、面白かった!
アンソロジーは、ハズレもあるんですけど、これは大当りでした。
薬丸岳さんの作品は初めて読んだんですけれど、凄く読みやすかったです!誰でも楽しめるエンターテイナーな作風という印象を受けました。
他の4人期待通りいや、期待以上の作品でした。あとがきにて、宮部さんは満足のいく出来ではないようなことを言われていますが、ファン的には大満足です!
あとがきは各作品ごとについているのですが、作品とは異なる作家さん自身の雰囲気が出ていて、なんだか可笑しかったです。
また、東山さんと宮内さんは、他の作品と少しリンクしているのも見所です。宮内さんのこのラストで締めるというのが
、何とも美しいです。
2018年4月30日月曜日
五人五様の伝奇アンソロ【宮辻薬東宮】<感想>
2018年1月9日火曜日
21世紀の個人と社会【彼女がエスパーだったころ】<感想>
第38回吉川英治文学新人賞受賞作品。
現代社会の中での個人や集団を、いくつかの事件の取材を行う記者の視点から描いた6つのお話です。
前半の3つは特に21世紀現在のSNSやマスメディア、それに対する大衆の様子がしっかり描かれています。マスメディアやウェブメディアの動きや市民の振るまいには、クスッとさせられる場面もいくつかあります。逆に、恥ずかしさや後ろめたさも覚えるよう箇所もあり、リアルさを感じました。
事件を煽り騒ぎ立てるメディアや大衆とは、対称的に当事者たちの秘められた想いが丁寧に描かれています。事件の当事者というだけあって、何かしら抱えているわけですが、それを顧みないメディアの動向には、憤りを覚えるとともに、反省させられます。
後半は、怪しい市民団体や、緩和ケアといった20世紀から続く問題を取り上げています。
私は最後の話「沸点」が好きです。気に入ったキャラが辛い目にあってしまう話でもあるんですが...。
主人公の記者のそれまでの事件の後の「谷」のような時期の話で、またある団体の話です。その中で人口の「転換点(ティッピング・ポイント)」が取り上げられるんですが、これは日本の文化の流れの中でも、似たような雰囲気を感じたことがある気がします。在日外国人やGLBT、また時間外労働への意識も、何度か問題として、メディアから取り上げられてからは、それ以前よりずっと多くの賛同者を得ているように思います。それ以前の社会をちゃんと知らないだけだったり、反発している人達が私の思っている以上にいるのかもしれませんが...。
それでも、「転換点」とこの話の結末は、私に少しの希望をくれました。
2017年6月25日日曜日
移民への考え方が広がる作品【カブールの園】<感想>
第30回三島由紀夫賞受賞作品。
日系2世のアメリカ人女性の話です。
作者の宮内悠介さん自身が少年期をニューヨークで過ごされていたからか、文章が外国的で、情景も生々しかったです。
有色人種としての差別は、想像していたけれど、親との考え方の違いによる衝突も移民の方が大きくなるという点には、考えが及びませんでした...。
グローバル化が進んで、世界中で移民問題も顕著な今、いろいろと不満がぶつかり合うけれど、どのようにしていくべきなのか。いろんな立場のいろんな意見がある中で自分たちが守るべきものが、作中の「最良の精神」なのではないかと思います。
同時収録の「半地下」は、父親に付いて渡米した姉弟が、父親が失踪した後、生き抜いていく話で、「カブールの園」とは少し雰囲気がアングラ寄りです。
また、移民の言語に関する話で、ずっと日本で日本語で暮らしてきた私は想像も出来なかった話でした。
なので、感想がうまく言葉に出来ない...。ただ、読み終わると、納得のため息が出ました...。
どちらも、移民への視点が増える作品だと思うので、移民問題に興味のある人、移民に嫌悪感のある人にオススメしたいです。