2018年6月28日木曜日

男の娘達の最高な恋愛【ぼくらのへんたい 全10巻】<雑感&紹介>

いろんな理由から女装をしている男子中学生3人の物語です。
女装をするからには、それなりの過去を背負っているワケで、序盤は重いし、ドロドロもしています。
自分の性別への違和感、親子関係、性欲と恋、男同士の恋、片想い...。
3人だけでなく、周りの人々のいろんな気持ちや状況も交錯していくことで、彼らは成長、「変態する」のです。
ただ「変態する」といっても、唐突に変化するわけではなく、ちょっとした積み重ねや日常的な経験の上で、成長するというように描かれているのが、好きです。
この結末も、綺麗事な都合の良いハッピーエンドではありません。
世界が変わったわけじゃないし、勝ち負けもありません。
しかし、彼らが成長したこと証明するような幸せな結末だと思います。
 
LGBTの話なので、性的少数派としてのシリアスな場面は多いです。
とはいえ、普通のラブコメのように、キュンっとなる場面もあります。
私は特に8巻がキュンとしました。
ある二人が布団を並べて寝ている場面なのですが、思春期故の独特の雰囲気で、読んでいる私までドキドキして、学生の頃のことを思い出しました。
 
他にも見所はたくさんあって、思春期の悩みを思い出したり、性について考えさせられたり、いろんな問題を提起した作品でした。
性の問題について、興味のある人には絶対オススメです。
作者が巻末漫画で、『最初は主役3人のことをあんまり好きじゃなかった』ということを書かれていたので、もしかしたら、LGBTの話を好きではない人でも意外とハマるかもしれないと思っています。

また、カバー下もいろいろと遊びがあって面白いです。
お着替えセットやレターセット、作風の違う感じとか...。
本当にいろんなバリエーションがあって、カバー捲るのもワクワクでした(笑)

2018年6月25日月曜日

素敵なキャラたちの学園漫画【かげきしょうじょ!!1~5巻】<雑感&紹介>

宝塚歌劇のような歌劇団育成学校を舞台にした学園マンガです。
身も心も大きなさらさという少女が主人公なのですが、彼女のおおらかな自由さが凄く可愛い。
そんな彼女に振り回されたり、励まされる他の登場人物たちも凄く良いのです!

ホテルマン凄すぎ【マスカレード・ナイト】<雑感>

「マスカレード」シリーズ第3弾。
でも、うっかり間違えて、「マスカレード・ホテル」を読む前に読んでしまいました...。
第2弾の「マスカレード・イブ」が「ホテル」の前日譚と聞いていたので、敢えて先に読んでいたのですけど、今回「ナイト」が第1弾かと勘違いして、読んでいたので、最初かなり困惑しました(笑)
「マスカレード・ナイト」は、作品の舞台であるホテル、コルテシア東京で行われる大晦日の仮装パーティの略称です。

今回は、ある殺人事件の犯人が「マスカレード・ナイト」に訪れるという密告により、またもコルテシアは警察に協力することになります。
事件以外にも、様々なお客様が訪れるのですが、彼らの被る「仮面」は見所です。
そして、そんなお客様達への、ホテルマン達の対応には脱帽せざるを得ません。
特に山岸さんが優秀過ぎる...。
それに比べて、警察ときたら...。
大義妙文を掲げて、自分達のことばかり...。
警察官が普通で、山岸さん達が凄すぎるだけなのかもしれませんけれど...。

また、新キャラの敏腕ホテルマンの氏原さんは、第一印象はあんまり良くなかったけれど、読み終わってからは一番好きなキャラです。
真面目過ぎるし、お客様以外には仏頂面だけれど、柔軟さや素直な面も持っていて...。
最後のチェックインの場面が凄く好きです。

懲りない主人公だと思ったら...【ワルツを踊ろう】

音楽を題材に取り入れた作品の多い中山七里さん。
今回は、クラシック好きの男性がリストラにあい、父親の死を機会に、出身地の村へと戻る話です。
主人公は、意固地で、プライドが高く、田舎を馬鹿にしたような考え方をしているので、少し共感し難いです。
彼の様々な試みも、胡散臭く、怪しげに思えるものばかりで、少し呆れながら読んでいました。
そんな彼視点からの、田舎の村社会の閉鎖性を描いたら作品かと思っていたんですが、物語はある失敗から急変します。
きっとこの物語は、「社会」というより「人」をテーマにしていたのではないかと思います。
特に、人の持つ悪意や不満です。
表面に出さないだけで、誰しもが他人への悪意や不満があり、それは少しずつ溜まっていっている。
また、そういったものの連鎖の末路の虚しさも、この作品には込められているように思います。
結末に繋がるような伏線があちこちにあり、作り込まれた作品でした。
でも、結末には少し異論もあります。
あの彼は野菜から間接的に摂取しているので、その影響が出ていてもおかしくはなく、そうとれる場面もあります。
なので、「本来の狂気」とは言い切れないと思うのです。
それでも、摂取量が格段に違うので、ラストの彼の絶望は変わりません。
[人を呪わば...]とは、よく言ったものです。
それでも、この最後の設定はなくても、良かったようにも思います。

有能なのに隠れた人々【光の帝国 常野物語】

恩田陸さんの「常野物語」というシリーズの第一作目。
異能をもちながらも、現代社会の中でひっそり暮らす「常野」という一族の話です。
ただ、超能力ファンタジーというよりも、社会、少数者、才能を持つ人達をテーマにした作品だと思いました。
「特別」であるが故の苦悩...と言ってしまうとありがちなテーマのようではありますが、「常野」の人達は社会に溶け込み、目立たないように暮らしているというところが面白いと思いました。
日本社会だからこその選択であり、そこが日本での少数者を暗示しているように感じます。

また、「歴史の時間」という話がドラマっぽいなーと思っていたら、この『光の帝国』は以前ドラマ化されている作品のようでした。
ちょっと検索してみたところ、原作とは少し異なるようなので、また今度探してみようかと思っています。

2018年6月22日金曜日

「家」をなくした少女達の虚しく醜く切ない話【路上のX】

ネグレクト、性的虐待、家出少女、DV、デートDV、売春、JKビジネス...。
そういった思春期の女の子たちをテーマにした話です。
男性に読んで欲しい作品です。
読んだところで、彼女たちの想いは言葉の上でしか分からないとしても、こういう想いがあることを知っておくべきだと思います。
彼女たちの生きざまは、切なくて虚しくて浅ましくて醜い。
罵っているような言葉ですが、そういう言葉でないと、彼女たちの強さと美しさを表現出来ない気がするのです。
大人と子どもの時期だからこその、社会への意識、社会からの扱い、そして成長途中故の未熟さ。
これらが凄く丁寧に描かれています。
彼女たちの未熟さと、社会で生き抜こうとする逞しさの混じりあったり、ぶつかったりする様が、この作品の見所だと思います。
私は主人公の真由よりもリオナやミトの方が好きです。
真由はまだ少し幼いというか、自分の正しさを信じすぎている義直さが目につく場面が多いです。
ただ彼女に比べて、他の二人が大人びているというのとは、少し違います。
二人は大人に対して諦めてしまっているのです。
辛い経験をした人は強いと言われるけれど、実際は強くならざるを得なかったんだと思います。
そして、その強さも、辛抱強さや鈍さだったりして、何かの拍子に壊れてしまうような、虚勢にも近いものなのかもしれません。
彼女たちの強さは、どこか綻びがあるからこそ、助け合おうとするし、衝突もするのでしょう。
それが、切なくて、虚しい。
ただそのどうしようもなさがとても魅力的です。
ラストのリオナの選択も切なさとどうしようもなさを感じますが、それがまた良かったです。
割りと長い作品ではありますが、少女達視点なので、読みやすいと思います。

2018年6月18日月曜日

日本らしい宗教テーマな離島の話【亀と蛇と虹の寓話】<感想>

ある離島に呼ばれた男性の離島での半生であり、そこで共に過ごした男女との神話のような話でもあります。
会話も含め、全て主人公目線で語られるので、慣れないと少し読みづらいです。
ただ神話や宗教をテーマにしていて、面白いです。
いろんな宗教的なイベントを持ちながらも、無宗教の人が多い日本らしい作品だと思います。
また、作風もテーマも全く違うんですけれど、先日読んだ今村友紀さんの「ジャックを殺せ、」と雰囲気が似てる気がするなぁと思っていたのですが、
東賢次郎さんも出身大学が同じでした!
しかも、東京大学...。
やっぱり賢い人の書く文章は、ちょっと違うんですね!!!
きっと読んで理解出来てない部分とかいっぱいあるんだろうなぁ...。

実写のような旅行ミステリ【ブラック・ベルベット】<感想>

恩田陸作品らしくも、読みやすいミステリ、神原恵弥シリーズ第3段です。
今回の舞台は、恐らくトルコがモデルのT共和国。
異国情緒溢れる風景描写も丁寧で、このシリーズは旅行ミステリとも言えると思います。
ミステリ部分に関しては、今回も一杯喰わされました!
「ブラック・ベルベット」については、何だか変だと思っていたんですけれど...。
前回の「クレオパトラの夢」とは全く異なる展開で、楽しめました。
それでも、結末は前回と同じ、もしくはそれ以上にスッキリしています。
そして、何だか映画のようなラストでカッコいいです。
うまく言えないんですけど、阿部寛とかが出てきそうな感じのコメディとミステリのバランスがちょうどいい雰囲気のエンディングでした。
また、途中の場面も、前作以上にコミカルさが強かったり、素敵な新キャラが出てきたりします。
話的にも、キャラ的にも、実写化成功しそうな作品だと思います。
最近は、好きな作品の実写化にあまり喜べなくなってきたけれど、これに関しては納得してしまいます。
ただ、世界が舞台なので、ロケ代がかかるだろうなぁ...。
とにかく、恩田陸作品の中では、特に読みやすいシリーズで、どの話からでも楽しめるので、今まで読んだことない人も是非...☆

ホストになった就活浪人生【チュベローズで待ってる age22】<感想>

NEWSの加藤さんによる小説。
就活に失敗した青年がホストになる話です。
ただ彼にとって、ホストは就職浪人中の高額バイトであり、作品の見所はホストの成長譚ではなく、周囲との関係の変化です。
家族、恋人、そしてある人物との関係がホストになったことで変わっていきます。
成人しつつも若さと未熟さが残っている主人公の光太と、ドロドロした世界という組み合わせが美しく調和した作品だと思います。
序盤で、ミサキさんが光太に接近するのが、少し展開が早すぎるようにも思ったんですけれど、ミサキさんの気持ちや作中の役割を考えると、違和感を覚えるほどでもありませんでした。
その後の美津子さんとの関係は、ありがちながらも、尊いです...。
このラストに繋がるのが、特に良いです...。
age32という二部もあるようですが、この一部だけでも、綺麗にまとまっていて面白かったです。
二部は、光太が希望に向かう話になるのか、それとも...。
楽しみです。

嫌いな人に贈りたい短編集【噛みあわない会話と、ある過去について】<感想>

辻村深月さんの6月の新刊、短編集です。

可愛い表紙で、水色が基調の全体的にも「女の子!」という表装の単行本ですが、作品は可愛いどころか、なかなかに後味の悪い話です。
ただ、逆にそれが「女の子」らしくもあり、「女子」の作品なんだと思いました。

また、短編四作中、一作は「宮辻薬東宮」に載っている「ママ・はは」です。
「宮辻薬東宮」では、ホラー的な要素を強く感じましたが、今回は「女性」の話であることの印象が強いです。
内容は変わっていないけれど、他の収録の影響もあってだと思います。

四作品全てに共通するのは、周囲や世間からの目とそれに対する自分の意識です。
それが原因となる様々な確執は、誰しも心あたりがあると思います。
異性の友達や、教師と生徒、親子、クラスメート...。
繊細な思春期の小さな溝は、イジメのように問題にならなくても、心に消えない傷として残っています。
この短編たちは、そういった「過去」を掘り起こす作品なので、読んで救われるか、苦しむかは人それぞれです。
ただどちらにしろ、前に進める話だと思います。
私は、優しい人よりも、意地悪な人・性格の良くない人に、この本を贈りたいです。
この本を読んで、そういう人が少し今までと違う視点を持ってくれることを願います。

2018年6月13日水曜日

予想以上に重い...【愛と呪い 1巻】<感想>


ふみふみこさんによる90年代後半を舞台にした話です。
20代後半以上の人達であれば、知っているだろういくつかの実際の出来事が出てきます。
前作の「ぼくらのへんたい」を少し読んで、面白かったので、新作を楽しみにしていたのですけど...

2018年6月12日火曜日

伏線張り巡らされたリレーのような物語【物語のおわり】<感想>

ある「物語」をめぐる物語です。
「物語」がリレーのバトンのように登場人物の間を渡って行くのですが、この「物語」の「おわり」について、登場人物たちが様々な想像をめぐらせます。
登場人物の中では、綾子が好きです。
不器用ながらも、素直で、真っ直ぐで...。
だからこそ、あんな彼氏と付き合うことになったのでしょうけど、こういった物語で成長するタイプです。
彼女までと、その後からで少し物語への視点が変わります。
環境が異なる彼らは、「物語」に対しての感じ方、注目する視点が異なるのは当然かもしれませんが、ここでの変化は世代の変化でもあるのかなと思います。
このひとつの物事に対するいろんな意見というのが、湊かなえ作品らしくて、好きだなぁと思いました。
 
そして、そんな考え方の異なる彼らを繋いだのは、北海道です。
北海道へ旅行に来たという共通点が彼らを引き合わせて、「物語」のリレーに参加させたのです。
そう思うと、旅行という非日常と北海道の魅力を神秘的にも感じます。
先日北海道が舞台の作品「クレオパトラの夢」を読んだとこだったので、北海道という舞台に運命的なものも感じました(笑)
「クレオパトラの夢」の感想→

また、あちこちに伏線が張り巡らされていて、読後も読み返したくなる作品です。

いくつも繋がる部分を見つけられると、ニンマリさせられると同時に、凄く計算しつくされた作品であることを実感、湊かなえさんの実力を思い知ります。

2018年6月6日水曜日

ありそうで斬新な「おばあさん×BL」【メタモルフォーゼの縁側】<雑感&紹介>

BLと出会ったおばあさんと女子高生の交流を描いた漫画です。
このおばあさんは書道教室の先生で、未亡人、そして上品で素直で優しい人です。
一見、年配の方にはBLは理解し難いように思えます。
しかし、彼女の耽美なBLの世界への反応は素直で、何だかBLが高尚な趣味にも思えます。
また、この作品は、絵も優しいタッチかつ、どこかにいそうな現実みがあり、素敵なのです。
おばあさんは、優しそうながらも、品のある様子が染みでています。
また、女子高生は、少し不器用そうで、垢抜けた感じはないけれど、穏やかで優しげ...。
そして、穏やかな雰囲気だけでなく、少し張りつめたような場面もあったり、します。
BLは、あまり大衆向けの作品というわけではないので、しょうがないのです...。
そして、そこがキャラの良さを引き立てて、また良いのです...。

先月、5/8に1巻が発売されていますが、連載はコミックNewtypeなので、無料でも読めます。
気になる方は是非是非に...☆
メタモルフォーゼの縁側-Newtype

ベビーの周りに萌えるノベライズ【小説・学園ベビーシッターズ】<雑感>

漫画「学園ベビーシッターズ」のノベライズです。
あとがきにて、作者の香月さんが「本編の隙間」と言われていますが、まさにそういう印象でした。
つまり、本編への愛を感じるノベライズです♪
個人的には、ベビー達よりも周りの高校生達や大人達の雰囲気が好きです。
(ラストの入れ替わり話もちょっと泣いてしまいましたけども!)
特に、犬井先輩...(と猫田さん)。
どんどん鹿島くんに夢中になる先輩を見てると、猫田さんが気の毒過ぎるwww
今回は、猫田さんの出番ありませんけど、17巻での水族館デート(?)回を思い出してしまってwww
ホモの沼へ勝手に沈んでいく犬井先輩と、彼を好きなのにツンデレな猫田さんの一方通行さには、気の毒ながらも、ニヤニヤが止まらないwww
でも、猫田さんはきっと報われると信じてますwww
あと、恒介さんの話も面白かったです。
こういう役者さん関連話がもっとあってもいいのになぁと、思います。
全体的に満足だったので、香月さんの別の作品も探してみようかとも思っています。
...と、著者プロフィールを見ていたら、来週の6/11が香月さんのお誕生日なんですね!
おめでとうございます!!!

2018年6月3日日曜日

人生の大切なモノが詰まったSF【ひとりぼっちの地球侵略 1~14巻】<感想&紹介>(ネタバレ控えめ)

ボーイミーツガールなSFラブコメでありながら、現代日本の日常の尊さを感じさせる作品です。
高校入学早々に怪しげな仮面の先輩に追いかけ回されるという謎の展開から、主人公の非日常な日常が始まっていきます。
「ひとりぼっち」というタイトルながら、徐々に仲間も増え、敵も増え...と物語は進んでいくのですが、「地球侵略」とあるように、宇宙規模の話で、平和な話ではありません。
ただ、学園生活での話も多く、平和な日常と命懸けの闘いが同居しています。
だからこそ、現代日本で当たり前のようにある平和な「普通」の生活がいかに尊いものか思い知らされます。
また、そういう「生命」や「家族」、「友達」の大切さだけでなく、「言葉」の大切さも描かれた作品です。
というのは、作中での特殊な力に、言葉を使うモノがあったり、「名前」が大切であったりするのです。
意味のある重いものだから、軽はずみに使うべきではない...ということです。
私は日本の「言霊」を連想しました。
また、前述の日常の「普通」の大切さには、戦時中を体験した祖母の語る「平和な生活」を送れる幸せさというのを思い出しました。
作者の小川麻衣子さん自身はまだ若い作家さんだと思うのですが、そういった少し前の日本的な考え方を基に描いた作品に感じました。
忙しい毎日の中では、ついつい疎かにしがちではありますが、こういうことは大切だと思います。

2018年6月現在、まだ完結していなくて、最新14巻が出たのが4月なので、次の15巻は10月くらいかと思われます...。
今、すっごいSF展開で、盛り上がっているのですけど、最終章なようなので、そろそろ完結なのかも...?
気になる方は、今のうちに是非チェックを!
1話だけでなく、3巻くらいまで読んでみることをお薦めします☆

2018年6月2日土曜日

愛憎入り交じるバトルファンタジー【ユキは地獄に堕ちるのか (全6巻)】<紹介(ややネタバレ注意)>

京都が舞台の群像和風ファンタジー漫画。
六道(地獄道、天道、修羅道、人間道、畜生道、餓鬼道)の力をもつ6人が外道と闘うお話です。
単純な勧善懲悪でない彼らの闘いと、登場人物たちの想いが交錯する様が見処です。
仲間内での嫉妬や葛藤に、過去からの因縁が交わることで、それぞれの想いが複雑なものへとなっています。
敵や過去の人格に振り回されたり、嫉妬から仲間たちの関係を掻き回したり...。
愛憎入り交じる三角、四角な恋愛バトルは、切ないところもあるけれど、好きです。
ドロドロなハズなのに、コミカルで、あっさりにも感じます。
主人公サイドは、そういう込み入った関係になっていますが、その側ではひっそり一途な恋があったりします。
私はメインの恋愛模様も好きですが、そういうカップルも愛でたい派ので、そちらの話も丁寧に描かれているのも、嬉しかったです。
また、ラストがハッピーエンドかは意見の割れるところではあるかもしれませんが、素敵な結末だと思います。
特に、ある二人が兄弟になっているようなことに、ニヤッとしました。

既に完結している作品ですが、全6巻(合計3000円以内)と長すぎず短すぎない作品だと思うので、こういった作品が好きなら、是非おすすめします。

次回作を...【ダダダ 2巻】<感想>

妹のために闘うボクシング漫画第2巻。
最終巻。
ボクシングは詳しくないけど、この作品は楽しみだったので、あっという間に終わってしまって、悲しいです。
今巻では、試合中の背景に思考を書く演出、最後が眉毛という終わり方が好きでした。
あと、明言はされないハルさんのほのかな恋心も好きです。
余計に今後の展開が見たかったのだけれど...。
ただ、作者はボクシングに詳しいわけではないそうなので、そういったところも早く完結した要因なのかと思っています。
この作者の演出は好きなので、次回作を楽しみにします。
今度は作者の好きな分野をテーマにして欲しいなぁ...。

傍観する眉美くんに...【緑衣の美少年】<感想(ややネタバレ注意)>

美少年シリーズ第8弾。
今回、美少年探偵団は胎教委員会へ映画で勝負をしかけます!
< 委員会主催の短編映画祭で入賞することで、足がかりにしようとする探偵団。
そんな中、眉美くんの視力の残り時間が少ないことが発覚!眉美くんは探偵団の活動中止に...。 >
今回、眉美くんの探偵団パートがほとんどなく、傍観者の立場です。
それでも、いつも通りの彼女なのが、凄く切なくて...。
探偵団が日常の中心で、その中で自分への肯定感を抱きつつあった彼女にとってはきっととても寂しい日々だったハズなのに、普段通りに振る舞おうとしていたんだと思うと、すごく愛しい...。
最近は長縄ちゃんという新しい友人が出来たとはいえ、探偵団が特別だったことには変わりないでしょうし...。
でも、眉美くんの独特の目線で読むからか、彼女自身が意識的に自覚するまで、全然気づきませんでした。
それを自覚させるまでの展開は、本当に秀逸です。
団長の作品がきっかけになるというのは、さすがです。
彼の作品は、探偵団での眉美くんを知っていてこそなのですが、私は泣いてしまいました...。
最後の眉美くんは、達観しているようで、このシリーズのクライマックスを予感させます。
探偵団を休止していても、傍観して、達観して...。ある意味「美観のマユミ」としての役目を果たしているようなのは、美少年探偵団らしくも思います。
それでも、終わりは寂しいなぁ...。
巻末の短編のコミカルさも、本編後に読むと切なくなります。
創作くんの前向きな一言が、本編のクライマックスな雰囲気への切なさに拍車をかけます...。
 
次回、「美少年M」は2018年秋ごろだそうです。
それまでには、もうちょっと乱歩作品を読もうかな。

2018年6月1日金曜日

母娘の確執×特撮【トクサツガガガ 13巻】

仲村さんのお母さんとの全面バトルがある巻です!
ついに正面対決が!冒頭で行われてしまいます!
なので、その後もそれが尾を引いています...
いつものコミカルさはありつつも...という感じでした。
現実は特撮のように、ハッピーエンドとは限らない...というわけで、それを描くのがこの作品の良さです!
もうめっちゃ泣いてしまった...
その後、傷心の仲村さんがダミアン少年を傷つけてしまう話も良いのですが、お母さんとのバトルがそれだけ彼女に大きいものだったということでしょう。
ダミアンとの話は、やや解決の光が見えるところまで進みます。
母と娘の問題を取り上げた書籍を最近よく目にしますが、この作品は、別の親子の様子や、現在の子どもたち目線を積極的に取り入れて、葛藤しているのが、味噌だと思います。
また、いろんな意見を取り入れることで、一人で戦ってきた母親とも対照的にもとれます。
今回はやや特撮要素が少ないモノの、特撮テーマならではの、母娘バトルで凄く良かったです。
特撮のように綺麗にシンプルに行かないからこそ、どういう着地点を迎えるのか、今後の展開が凄く楽しみです!!!