2019年10月9日水曜日

「私か仕事かどっち?」問題:かげきしょうじょ!!《8巻 感想》(ネタバレ注意)

前巻、さらさがティボルトを放り出して、地元へ帰った文化祭編の続きです。
予科生編が終わる8巻。
さらさにとっては一区切りというか、
一皮剥けるというか、剥かれるというか...
1つの成長を迎える話でした。

前の7巻の巻末で、本科生達の卒業を描いて、8巻はさらさの葛藤が中心の話という、ハッキリ分けられた構成は、凄く綺麗だと思います。
時系列的に、少し混乱もするけれど、分けてあることで、さらさの話をボリューミーに感じました。
さらに、先に7巻の本科生の話を見た方が、聖先輩の態度がぐっと来ます。
「舞台か、家族か」という選択に関して、冷たい態度でさらさの背中を押し、戻ってきたときにも突き放すような発言をした彼女。
総合的に評価した論理的な判断からのように言っているけれど、彼女自身が紅華を去るのですから、きっと思うところがあったのでしょう。
そもそも、先輩の性格からして、かなり強い想いがあるからこそ、こういう風にハッキリ振る舞ったんだと思います。
また、この「舞台か、家族か」問題は、役者さん達の話というだけでなく、「仕事か、私どっちが大事なの?」問題として、一般の人にも身近な話だと思います。
「舞台」や「仕事」は、場合によっては、「夢」や「目標」が当てはまり、「家族」や「私」は、まとめて言えば「大切な人」。
煌三郎兄さんの言うように、どっちが正解ということはないと私も思います。
「家族」を選んださらさと、「舞台」を選ぶという煌三郎兄さんの違いは、きっと、目標に向かって頑張った時間の差でしょう。
繰り返されるお稽古の「時間」というだけでありません。
役者として高みに上がっていくにつれて、集まる応援や期待、支えてくれる人達といった周囲の想いも増えていきます。
つまり、「責任」も大きくなっていくのです。
そう考えると、いくら大切な人でも、舞台を投げ出すことで、その人に迷惑をかけてしまうかとしれない。
また、その人が応援していてくれたのなら、想いを裏切ることになるかもしれない...。

今回、逆ギレ(?)した暁也くんが言っているのも、その責任のことだと思います。
大切な人が夢を応援してくれるのは、羨ましいです。
それが、自分の選択とは反対で、背中を押してくれなかったとしても...。
それだけ、認めているからこそ、挫折を許さないというのが、凄く羨ましいです。

さらさを「星」だと言う場面で、愛ちゃんが空を眺める様子が描かれているのが、凄く美しいと思います!
ティボルトを代役したものの、噛んでしまった愛ちゃん。
これを見て、愛ちゃんと暁也くんは二人とも、さらさのライバル役だったんだなぁと気づきました。
愛ちゃんはもちろん、紅華でのライバルで、暁也くんは歌舞伎、もしくは助六を目指すライバルだったんです。
暁也くんとの関係が、ちょっと恋人らしくないとは思っていたんですけど、ライバル要素があったからなんですね...。

また、愛ちゃんはラストでファントムに男役を打診されたので、もしかすると、今後オスカル様を目指すライバルに...!!
暁也くんの星の場面を読んだときには、ティボルトを演じる愛ちゃんが伸ばした手はさらさを目指しているようにも見えたんですけど、男役を目指す展開ならば、これはさらさと愛ちゃんが競いあって高みを目指すライバルに見えてきました...。
愛ちゃんの出番ちょっと少ないけど、その分、濃厚でした!


あと、さらさの生い立ちに関する話が今回ちょっとハッキリするのかと、思ってたんですけど、謎なままで、新しく謎の美女登場です...!
異母姉...なのかな?
なら、やっぱり歌凰さんがお父さん?

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