2018年3月28日水曜日

憎たらしいほどのハッピーエンド【バイオーグ・トリニティ 14巻】<感想(ネタバレ要注意)>

<委員長と和解して、世界再構築、ホサも復活、委員長も再成、21星もハンターも新しい世界で、新しい人生!>

“みんな救われる、みんな幸せなハッピーエンド”な一見、都合が良すぎに感じてしまう結末で、単純コレだけなら、私は凄く不満なんだけど、展開が上手くて凄く満足の行くフィナーレでした。

この結末の特に好きな部分が3つあります。

まず、委員長への勝利。
これは、藤井の成長の証で、父を子が越えるようなモノに感じました。しかし、委員長の存在は、芙三歩と藤井が出会ったことで生まれたので、一言では言い表せないところでもあります。

次に、再構築後の世界での神様ズやハンター、21星達。
あんなに殺しあったのに、みんな無事ってことに、一見ご都合主義を感じます。
けれど、再構築後はみんな力を失っています。普通の人間として生きるということで、蘇った代償は払っていると思うのです。あれだけのことが出来た人達がその記憶を持ったまま、普通の人間として生きるのは、かなり大変なことです。
こういうハッピーエンドだと、そういう部分はややおざなりになりがちなのですが、この作品ではそこにも少し触れています。

そして、最後にサルタヒコの正体が明らかになるまでの物語展開です。
ウタマロを思い出すコミカルな場面から、委員長の再登場、4人の四角関係を感じさせつつも幸せなエンドロールという滑らかな最後の後に、舞城王太郎の掌編を2つ挟んでの、サルタヒコの正体。
二人の藤井が語り合う場面には、みんなのハッピーエンドすら、このための布石だったのではないかとすら思いました。
ものすごく満足のいくラストでした。
掌編もバイオーグトリニティのメンバーが出てくるわけではありませんが、舞城王太郎作品らしい独特の世界で、「生」と「性」について考えさせられる日常系です。
「生」についても、「性」についても、結局は「愛」に行き着くのですが、それが舞城王太郎作品の好きなトコです。

また、季刊エス61号にて、大暮維人さんのインタビュー記事もあるそうです。
「Infini-T Force」にも携わられていたんだっけ...

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