2018年6月18日月曜日

嫌いな人に贈りたい短編集【噛みあわない会話と、ある過去について】<感想>

辻村深月さんの6月の新刊、短編集です。

可愛い表紙で、水色が基調の全体的にも「女の子!」という表装の単行本ですが、作品は可愛いどころか、なかなかに後味の悪い話です。
ただ、逆にそれが「女の子」らしくもあり、「女子」の作品なんだと思いました。

また、短編四作中、一作は「宮辻薬東宮」に載っている「ママ・はは」です。
「宮辻薬東宮」では、ホラー的な要素を強く感じましたが、今回は「女性」の話であることの印象が強いです。
内容は変わっていないけれど、他の収録の影響もあってだと思います。

四作品全てに共通するのは、周囲や世間からの目とそれに対する自分の意識です。
それが原因となる様々な確執は、誰しも心あたりがあると思います。
異性の友達や、教師と生徒、親子、クラスメート...。
繊細な思春期の小さな溝は、イジメのように問題にならなくても、心に消えない傷として残っています。
この短編たちは、そういった「過去」を掘り起こす作品なので、読んで救われるか、苦しむかは人それぞれです。
ただどちらにしろ、前に進める話だと思います。
私は、優しい人よりも、意地悪な人・性格の良くない人に、この本を贈りたいです。
この本を読んで、そういう人が少し今までと違う視点を持ってくれることを願います。

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