2018年6月25日月曜日

懲りない主人公だと思ったら...【ワルツを踊ろう】

音楽を題材に取り入れた作品の多い中山七里さん。
今回は、クラシック好きの男性がリストラにあい、父親の死を機会に、出身地の村へと戻る話です。
主人公は、意固地で、プライドが高く、田舎を馬鹿にしたような考え方をしているので、少し共感し難いです。
彼の様々な試みも、胡散臭く、怪しげに思えるものばかりで、少し呆れながら読んでいました。
そんな彼視点からの、田舎の村社会の閉鎖性を描いたら作品かと思っていたんですが、物語はある失敗から急変します。
きっとこの物語は、「社会」というより「人」をテーマにしていたのではないかと思います。
特に、人の持つ悪意や不満です。
表面に出さないだけで、誰しもが他人への悪意や不満があり、それは少しずつ溜まっていっている。
また、そういったものの連鎖の末路の虚しさも、この作品には込められているように思います。
結末に繋がるような伏線があちこちにあり、作り込まれた作品でした。
でも、結末には少し異論もあります。
あの彼は野菜から間接的に摂取しているので、その影響が出ていてもおかしくはなく、そうとれる場面もあります。
なので、「本来の狂気」とは言い切れないと思うのです。
それでも、摂取量が格段に違うので、ラストの彼の絶望は変わりません。
[人を呪わば...]とは、よく言ったものです。
それでも、この最後の設定はなくても、良かったようにも思います。

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