2019年7月12日金曜日

「近親者の喪失」としての「死」:アインシュタインの怪物《最終3巻 感想》

「魔女」という種族の少年と、彼に救われ、共に旅に出た少年の話です。
表紙から分かるように、絵本のような独特の可愛いタッチの作品です。


ただ、最近のアニメのような絵に慣れていると、スッゴく読み難いと思います。
独特の立体感が感じるようなとても丁寧な絵でありながら、デフォルメも意外と多様されていて、コマ割りも工夫されていたり、絵だけでも凄く面白い作品なのですが、苦手な人は多いかもしれません。

話も、毎巻一人以上は死ぬという絵柄によらず、かなりダークな作品です。

でも、私は絵も話も好きです!

「死」はいろんな創作の中で、よく扱われるテーマのひとつです。
最近はサイコな作品がメディアで取り上げられることも増え、「死」がどこか軽くなってきているような気がしていました。
「毎巻一人以上死ぬ」と言えば、この作品も命を軽んじた内容であるかのように思われるかもしれませんが、ひと味違います。

この作品の「死」は、「人生の終わり」としてよりも、「近親者の喪失」として要素を強く描かれています。
大切な人を永遠に失ったことに悲しみ、「死」に至るきっかけや過程に憤り、喪ったあとの人生とどのように向き合うか。
「命の終わり」に対する恐怖よりも、残された人々の苦悩に焦点を当てられているのが、新鮮でした。
「死」を迎えると、もう終わりなのか、まだ何か続きがあるのかは分かりません。
でも、残された人々にはまだ人生があることは間違いありません。

喪った悲しみを抱えて、彼らが生きていくという点が描かれることで、自分の「命」を大切にする必要性を感じました。
ただ「命の大切さ」を訴えるよりも、こういう表現の方が、胸に響くという人は少なくないのではないでしょうか。

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