2019年2月27日水曜日
2018年7月31日火曜日
2018年6月25日月曜日
有能なのに隠れた人々【光の帝国 常野物語】
恩田陸さんの「常野物語」というシリーズの第一作目。
異能をもちながらも、現代社会の中でひっそり暮らす「常野」という一族の話です。
ただ、超能力ファンタジーというよりも、社会、少数者、才能を持つ人達をテーマにした作品だと思いました。
「特別」であるが故の苦悩...と言ってしまうとありがちなテーマのようではありますが、「常野」の人達は社会に溶け込み、目立たないように暮らしているというところが面白いと思いました。
日本社会だからこその選択であり、そこが日本での少数者を暗示しているように感じます。
また、「歴史の時間」という話がドラマっぽいなーと思っていたら、この『光の帝国』は以前ドラマ化されている作品のようでした。
ちょっと検索してみたところ、原作とは少し異なるようなので、また今度探してみようかと思っています。
2018年6月18日月曜日
実写のような旅行ミステリ【ブラック・ベルベット】<感想>
恩田陸作品らしくも、読みやすいミステリ、神原恵弥シリーズ第3段です。
今回の舞台は、恐らくトルコがモデルのT共和国。
異国情緒溢れる風景描写も丁寧で、このシリーズは旅行ミステリとも言えると思います。
ミステリ部分に関しては、今回も一杯喰わされました!
「ブラック・ベルベット」については、何だか変だと思っていたんですけれど...。
前回の「クレオパトラの夢」とは全く異なる展開で、楽しめました。
それでも、結末は前回と同じ、もしくはそれ以上にスッキリしています。
そして、何だか映画のようなラストでカッコいいです。
うまく言えないんですけど、阿部寛とかが出てきそうな感じのコメディとミステリのバランスがちょうどいい雰囲気のエンディングでした。
また、途中の場面も、前作以上にコミカルさが強かったり、素敵な新キャラが出てきたりします。
話的にも、キャラ的にも、実写化成功しそうな作品だと思います。
最近は、好きな作品の実写化にあまり喜べなくなってきたけれど、これに関しては納得してしまいます。
ただ、世界が舞台なので、ロケ代がかかるだろうなぁ...。
とにかく、恩田陸作品の中では、特に読みやすいシリーズで、どの話からでも楽しめるので、今まで読んだことない人も是非...☆
2018年5月30日水曜日
穏やかな不安に包まれる北国ミステリ【クレオパトラの夢】<感想(ややネタバレ注意)>
恩田陸作品ならではの静かな不安の漂うミステリ作品です。
不倫相手を追い、北海道へ渡った妹を連れ戻す話です。
が、彼がすでに死んでしまっていたり、主人公にも別の目的があったり、と何やら不穏な雰囲気で話が進んでいきます。
キーマンとなる不倫相手の痕跡を辿る中で、真相に辿り着くまでに二転三転していく展開には、見事に振り回されました。
全く予想出来ない結末でした...。
ただ、細菌部隊の本を以前に読んだことを思い出していたので、個人的には凄くタイムリーでした。
また、「MAZE」という作品の第二作目にあたるシリーズ作品です。
全く気づかずに手にとって、読み終わってから、気づきました!(笑)
とはいえ、前作を読んでいなくても、充分楽しめました。知らないからこそ、ハラハラした部分もあります!
でも、主人公の恵弥の中性的なキャラは凄く好みなので、「MAZE」も読むつもりです!
2018年2月8日木曜日
失恋した女性に贈りたい落ち着いたミステリ【木洩れ日に泳ぐ魚】<感想>
男性と女性、二人の主人公の視点から交互に語られるある出来事の話です。推理小説ではないけれど、ミステリです。
そしてなぜか、男性の主人公視点で、伊坂幸太郎作品を読んでいるような気持ちになります。
こういう風に、作家さんを別の作家さんを比べるのはあんまり良くないと思っているのですけど、大切な女性への視線というか、気持ちの向け方が、伊坂幸太郎作品のキャラクターと似てる気がするのです。知的ながらも影があるところにそう感じたんでしょうか...。
もしかしたら、私が知らないだけで、世の男性の多くはこういう一面を持っているのかもしれません。
一方、女性主人公も、世の女性が抱える強さと嫌らしさを胸に秘めています。
この物語はある事件の真相に迫る中で、ある家族の事実が明らかになっていく話で、かなりドロドロとしています。疑心暗鬼で重々しい雰囲気なので、苦手な人にはオススメしません。それでも、彼らの生々しい本音は鏡のように、自分の中の短所を見せつけて、受け入れるチャンスを与えてくれます。
読んでいる間は、忘れてしまいがちな展開なのですが、恋愛小説でもあります。なので、失恋から立ち直りたいけど、痛快コメディではなく、少し落ち着いた話が読みたい!という方にオススメです。
2018年1月6日土曜日
男と女と...【劫尽童女】<感想&考察>
10年以上前の作品で、読んだことがあったのに気づかず手に取ったんですが、改めて読んでみると、やはり以前とはちょっと違う感想をもちました。
ハラハラドキドキする展開は、ぼんやりと覚えていたので、 彼らの迎える結末を想って、 ハラハラというより、悲しい気持ちで見守るような気持ちでした。なので、初めて読んだときより、落ち着いて読めたんですが、登場人物たちの言葉に少し反論したくなったので、ここで書かせてもらいます。
「元は女で、男になる」という意味の台詞を二人の登場人物が語るのですが、私はこれは少し違うと考えます。
たしかに、男性の体に女性の名残と思われる部位があることや、染色体が女性がXXで男性がXYであることから、「女が男になる」と考えられます。
でも、そうするとやや違和感があります。女性の体のときに出来た出産が、男性になると出来なくなるというのは、生き物の進化として非効率ではないでしょうか。男性も出産が出来た方が生物的多様性は高まるはずです。
にもかかわらず、男性が妊娠出来ないのは、「女が男になる」のではなく、「別の何かから男になった」からなのではないでしょうか。もっと言えば、女も同じで、ただ「別の何か」の特徴を強く残した性が女だったということだと、私は考えています。 発達過程の未成熟な子ども達は、遺伝子によって分化がされている状態ですが、「別の何か」に近い状態でもあり、そこから「男」や「女」になっていくのでしょう。
また、前の台詞を語った一人は、「世界は女のものだった」とも言います。現在の社会が、男性社会であるということや、それが引き起こしている争いがあるということには私も同感です。ただし、社会を女性のものにするべきとは思えません。
昨今の日本の女性議員や女性の経営者の方々が成功しているようには、見えないからです。非難したいわけではなく、男性社会の中で凄く努力をされているんだろうと思うのですが、少し違う気がします。全員とは言いませんが、ただ男性の真似事をしているように見えるのです。女性を武器にして、男性の仲間入りをするという何だかよく分からないことをしているように感じます。
こういうことは、「男と女」に囚われているから、問題なのではないでしょうか。たしかに、この二つの性により、多くの違いはあるけれど、この二つの性にこだわるほどのことでしょうか。
この作品を改めて読んで、この結末、主人公やその周りの人々の選択に、そういうことへも思いを馳せさせられました。
2017年12月11日月曜日
恩田陸萌え【猫と針】<感想>
演劇集団キャラメルボックスのために、恩田陸さんが書き上げた脚本です。チラシやパンフレットの抜粋やあとがき的な書き下ろしを掲載して、書籍として、発行されてるんですが、めっちゃ面白いwwwwww
本編は、かっての映研の同級生たちが映画監督になった一人の頼みで、エキストラ役のために集まるという話です。別の同級生のお葬式後という設定で、恩田陸作品ならではの、不穏な雰囲気が漂っていて、最後までドキドキします。最後には、モヤモヤやドキドキの裏で登場人物たちの抱えていた問題や心情がじんわりと明らかになり、いろいろと考えさせられます。
舞台で観れば、後で一緒に見た人と感想を話し合いたくなる味わい深い作品でとても面白かったんですが、先にも挙げたチラシやパンフの抜粋、書き下ろしでのメイキング話も滅茶苦茶面白かったですwww一言で言えば、なかなか書けなかったという話なんですが、それを淡々としながらも焦燥感も感じる様子で書かれていて、凄く可笑しかったですwww
今までは、恩田陸作品は小説しか読んでなかったけど、今度エッセイも読んでみようかな...!
2017年10月3日火曜日
男子寮の美しい7日間【ネバーランド】(あらすじ&感想(ネタバレ控えめ))
有名私立男子校での冬休みの寮での1週間を描いた話です。 聖書では、神様が世界を1週間で作ったとありますが、この作品の1週間もそれに匹敵するほどの濃密さだと感じます。
< 日中は男子学生らしく、ダラけたり、騒いだり...。そして夜には、飲み会と彼らの抱える闇を暴露...。 >
恩田陸作品の男子学生たちはホントに美しい...。まさに尊い...。
特に今作はいかにもモテそうな4人だった!真面目系ながら闇を抱えてたり、おおらかで気遣いができたり、感受性が強くて優しかったり、飄々とした天才だったり...。しかも、その彼らが『仲良し四人組』というわけではなかったところも、物語を面白くしていると思います。
文庫版だと、単行本時のあとがきと文庫版でのあとがきの両方が読めるので、文庫版をオススメします。
2017年9月9日土曜日
ドキドキして切ないミステリー【不安な童話】(感想(ネタバレ控えめ))
<ある「才能」を持つ万由子。ひとりの女性画家の遺作展をキッカケに、25年前の彼女の殺人事件に関わっていく…。>
「生まれ変わり」や「超感覚」のようなオカルト的な要素を少し含みながらも、ファンタジーではなく、「親子」や「恋愛」といった人間関係が肝となるミステリーです。
しっかり伏線も張られているので、結末を知ってしまうとなんてことはないけれど、読んでいるときには、誰が犯人だったのか、全く分かりませんでした...。そこが、探偵役の天才さを自然に表現しています。
ただ『驚愕のラスト』というよりも、『切ない真相』という印象です。事件の真相についても、犯人の行動についても、切なくて、悲しい。万由子の言うように今度は「誰も間違えていない」と思いたい。
エピローグは少しぞわっともします。事件の真相として、語られなかったこのエピソードがあることで、また事件への感じ方が変わります。でも、私はこのエピローグ好きです。このエピローグのあとに読み返すと、ハッキリとは語られていない想いを感じて、この話はそこまで悲しいものではないのだと思えます。
2017年8月21日月曜日
恩田陸入門的な短篇集【図書室の海】(雑感&紹介)
去年の直木賞授賞作品の「蜜蜂と遠雷」で恩田陸さんを知った方も多いかと思います。「蜜蜂と遠雷」を読んだ人にも、まだの人にも読んで欲しい短篇集です。
タイトルの「図書室の海」は「六番目の小夜子」の番外編です。他にも「夜のピクニック」、「グリーンスイーブス」、「麦の海に沈む果実」の前日譚もあります。
「睡蓮」が「麦の海に沈む果実」の登場人物の幼少の頃の話になるのですが、「殺人鬼アンソロジー」でも番外編が読めるので、是非☆
また、「イサオ・オサリヴァンを捜して」(「グリーンスイーブス」の予告編)や「茶色の小壜」が気に入った人には、「Q&A」をオススメします。
私は「グリーンスイーブス」はまだ読んでないので、読んでみようと思ってます。
2017年8月12日土曜日
重厚な冒険モノ【上と外】<感想><ネタバレ注意>
全六巻の文庫本書き下ろし作品なのですが、上下巻に合本されたものもあります。私は上下巻の方で読みました!
あとがきには、作品を書いた後に舞台となったG国のモデル、グアテマラに行かれた話もあります。
今回は冒険モノでした!<ジャングルや地下遺跡でのドキドキアドベンチャー>と言ってしまうと少しチープに聞こえますが、主人公たちのやや特殊な家族関係に加えて、クーデターなどの事件も絡み、とても重厚な内容になっています。
冒険モノと書きましたが、登場人物たちの心情の変化が一番の見所だと思います。
主人公の練と千佳子が二人揃ってヘリコプターから投げ出されたのと対照的な描写としてだけでなく、練と千佳子のそれぞれの成長が表れているように思います。千佳子の救出の場面は、千鶴子の変化が大きく表れている場面でもあり、涙なしには読めません。
前半の千鶴子は「恋に盲目」で自分勝手な母親だったのですが、終盤、目が覚めたように必死に千佳子と練を助けようとする様子に号泣してしました...。
なかなかの長編ものではありますが、オススメです。
2017年6月20日火曜日
近未来SF×男子高校生×サブカル 【ロミオとロミオは永遠に】<感想>
日本人だけが残された近未来の地球。その超難関男子高校で繰り広げられる日常、友情、バトルに、脱走劇......。裏には政治や甘酸っぱい恋もあったり...。
静かでミステリアスなイメージのある他の恩田陸作品とは異なり、終始ハラハラドキドキ、スリル満点の作品です。
展開も登場人物たちも、少年マンガ的でとても読みやすいので、恩田陸作品を読んでみたことのない人にもオススメです♪
作者本人は文庫版あとがきにて、「ハッピーエンドのつもりが、絶望的に感じる」と語っていますが、
ハッピーエンド好きにも、バッドエンド好きにも、是非読んで欲しいです。
何度か読み返すと、作者の言う通りに感じますが、そこも少年マンガ的で、想像を掻き立てられるので、私は好きです。
ただ、冒頭はかなり過激な描写があるので、ご覚悟を...!
また、 20世紀のサブカルチャーを数多くオマージュされ、ギッシリ詰まっているので、詳しい人はそういった部分も楽しめるのではないかと思います。
他にも、終盤の展開には、東京オリンピックが近い今、読むと余計に引き込まれて興奮するかも...?