2018年1月6日土曜日

男と女と...【劫尽童女】<感想&考察>

10年以上前の作品で、読んだことがあったのに気づかず手に取ったんですが、改めて読んでみると、やはり以前とはちょっと違う感想をもちました。
ハラハラドキドキする展開は、ぼんやりと覚えていたので、 彼らの迎える結末を想って、 ハラハラというより、悲しい気持ちで見守るような気持ちでした。なので、初めて読んだときより、落ち着いて読めたんですが、登場人物たちの言葉に少し反論したくなったので、ここで書かせてもらいます。
「元は女で、男になる」という意味の台詞を二人の登場人物が語るのですが、私はこれは少し違うと考えます。
たしかに、男性の体に女性の名残と思われる部位があることや、染色体が女性がXXで男性がXYであることから、「女が男になる」と考えられます。
でも、そうするとやや違和感があります。女性の体のときに出来た出産が、男性になると出来なくなるというのは、生き物の進化として非効率ではないでしょうか。男性も出産が出来た方が生物的多様性は高まるはずです。
にもかかわらず、男性が妊娠出来ないのは、「女が男になる」のではなく、「別の何かから男になった」からなのではないでしょうか。もっと言えば、女も同じで、ただ「別の何か」の特徴を強く残した性が女だったということだと、私は考えています。 発達過程の未成熟な子ども達は、遺伝子によって分化がされている状態ですが、「別の何か」に近い状態でもあり、そこから「男」や「女」になっていくのでしょう。
また、前の台詞を語った一人は、「世界は女のものだった」とも言います。現在の社会が、男性社会であるということや、それが引き起こしている争いがあるということには私も同感です。ただし、社会を女性のものにするべきとは思えません。
昨今の日本の女性議員や女性の経営者の方々が成功しているようには、見えないからです。非難したいわけではなく、男性社会の中で凄く努力をされているんだろうと思うのですが、少し違う気がします。全員とは言いませんが、ただ男性の真似事をしているように見えるのです。女性を武器にして、男性の仲間入りをするという何だかよく分からないことをしているように感じます。
こういうことは、「男と女」に囚われているから、問題なのではないでしょうか。たしかに、この二つの性により、多くの違いはあるけれど、この二つの性にこだわるほどのことでしょうか。
この作品を改めて読んで、この結末、主人公やその周りの人々の選択に、そういうことへも思いを馳せさせられました。

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