2018年7月3日火曜日

不気味なタイトルだけど美しい本格ミステリ【屍人荘の殺人】<感想>

今村昌弘さんのデビュー作にして、数々の賞を受賞されている2018年話題だったミステリー賞です。
(『第27回鮎川哲也賞』、『このミステリーがすごい!2018』、『週刊文春ミステリーベスト10(第1位)』、『2018本格ミステリ・ベスト10(第1位)』『本屋大賞2018(第3位)』...)
こう列挙してしまうと、凄く華々しい作品のようですが、私はゆっくり落ち着いて読んで欲しい作品だと思いました。
「屍人...」という不気味なタイトルながらも、切なくて虚しくて美しい本格ミステリなのです。
 
推理小説には、殺人はつきものですが、あまりポコポコ起きると命が粗末に扱われているような気がしてしまいます。
が、この作品はそれぞれの故人に対する想いが丁寧に描かれています。
死んでしまって終わりではなく、それまでの関係から、登場人物それぞれがいろいろと想いを抱いている様子が好きです。
どのキャラにも物語の中で描かれていない「人生」があるのです!
また、探偵役の比留子さんの体質も、作者が命を大切さを忘れないように感じました。

事件の真相は切なく虚しいけれど、そこがまた美しい結末でもあります。
故人への様々な想いがあると、先程書きましたが、どんなことでも、人それぞれ感じ方は異なるということを深く考えさせられました。
物語展開も登場人物も好きなので、是非、シリーズ化して欲しいです!

また、単行本は「第27回鮎川哲也賞」の選考経過や、選評が載っています。
個人的に加納朋子さんの選評が読みやすくて、分かりやすかったです。
ある程度のネタバレが平気な人は、選評を読んでから、どの「鮎川哲也賞候補作」を読むか選ぶのもありだと思います。

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