2018年10月31日水曜日

抽象的な部分が飲み込めたかも?【私はあなたの瞳の林檎】《感想》

舞城王太郎作品は、少女への「愛」が美しいんだと思っていたんですが、少女を愛する「少年」が尊いのだということに気づきました。

他にも、他作品でも描かれていたことが以前よりハッキリ飲み込めた気がします。

また、この作品は、新プロジェクト1冊目「恋篇」なのだそうです。
プロジェクト名は、何なんでしょうか...。

2冊目「家族篇」感想→

「恋篇」のこの1冊には3つの作品が収録されています。
表題と同タイトルの「私はあなたの瞳の林檎」。
美大生の恋を描いた「ほにゃららサラダ」。
そして、書き下ろし作品の「僕が乗るべき遠くの列車」。

ひとつめは、未熟で一途な愛。
少年、直紀の馬鹿正直さが微笑ましく、羨ましいです。
また、少女、林檎を見つめ、言動を受け入れ、
周りも省みず堂々と彼女を愛する彼により、少女達のミステリアスな身勝手さが、
切なくも感じられます。

ふたつめは、女性視点で物語が進みます。
なので、女性、松原の成長が際立っていますが、私は男性、高槻くん側の愛にも注目したいです。
高槻くんは一作目の直紀とは全く違うタイプです。
松原のことをしっかり見ていたようではあるのですが、視点の違いにより、二人はすれ違います。
《お互いに良い影響を与え合いたかった》という恋愛の姿勢がきっかけだったように思えたのですが、後半にある高橋くんの言葉を見て、高槻くんの《視点》に偏りがあったのが一番の問題だったように思いました。
(※一文字違い苗字ですが、高橋くんと高槻くんは、別人です。)

そして、三作めの彼、祐介はさらに内向的というか、思索家っぽくなります。
ひとつめから徐々にヒロインに向ける想いより自分への気持ちが強くなっていっているようではありますが、祐介の悶々とした思考は後半に開花します。
<彼は世界の中での自分の意味や役割を無価値に感じる少年でした。しかし、二人の少女と出会いから、少し考えに変化が起きます。>
私は3つの中でこの話が一番好きです。
《世界の中の役割》というのは、舞城王太郎さんが原案の「バイオーグ・トリニティー」を連想させます。
その「バイオーグ・トリニティー」や他作品では、《少女への愛で世界が出来ている》とでもいうような話が多いです。

しかし、今回は《世界にとっては無価値》という全く逆とも言える考え方を切り口とし、そこから拡がる《影響》という価値に気づくというところに着地します。
この考え方に私は凄く納得しました。
もしかしたら、他作品で今まで「愛」を中心として抽象的描かれていた部分を少し論理的描かれた部分なのかとも思います。

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