2017年10月2日月曜日

現代版「少女地獄」!ゾッとしたい20代女性へ【じごくゆきっ】<感想&紹介(ネタバレ控えめ)>

桜庭一樹さんの短編集です。社会に出てすぐくらいの20代女性の登場人物が多いので、そのくらいの世代の人はいろいろ思うところのある作品かと思います。人間の怖さを描いた話が好きな人にオススメです。
一言で言えば、現代版「少女地獄」といった感じで、どれも女性たちの怖くて切ない話です。 タイトルに「じごく」と入っているのは、やっぱり夢野久作を意識してなのでしょうか。
夢野久作の「少女地獄」に比べると、どれもまろやかな結末です。また、手紙としての描写が多い「少女地獄」より、少女たちの苦悩が身近に感じられます。手紙だからこそ、想像を掻き立てられる部分もあるので、興味のある人は「少女地獄」も是非...!
 
収録されている短編の中で、一番好きなのは、冒頭の「暴君」という話です。中学生の少女目線で、ある事件について、ゆっくり触れていく形で話が進みます。
この語りが面白いところでもあるので、ここでは内容について詳しく書きませんが、[特別になりたい女の子]と[平凡になってしまった女性]に読んで欲しい作品です。迷う思春期の少女が、事件に面して、不安や葛藤で悶える姿は、同じ世代が読んでも、もう成人した人が読んでも考えるところがあると思います。事件の渦中にいた少年も重要であり、彼の変化も見処です。
また、巻末の「脂肪遊戯」は舞台が同じなので、別の角度から「暴君」を見ることも出来ます。
一方、一番怖かったのは、「ロボトミー」です。これは妻に過剰に干渉し続ける姑(妻の母)が出てきます。この姑が何考えてるか、分からないし、彼女がキッカケである事件が起きてからは、先の展開が全く予想できなくて、凄くドキドキビクビクしながら、読み進めました。でも、結末は悲しくも穏やかです。
他にも、虚しかったり、切ない結末を迎えるモノがありますが、どこか救いがあったり、前向きだったりします。なので、仕事や人間関係に疲れたときに読むと、少し視野や視点が広がって、少し生きるのが楽になるかもしれません。

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