2017年10月9日月曜日

タイトルに惹かれて...【ぼくには世界がふたつある<原題:Challenger Deep>】(感想<少しネタバレ注意>)

この作品は、全米図書賞児童文学部門を受賞した作品で、アメリカの作品です。海外の作品では、よくあることですが、原文と邦訳でタイトルが異なります。訳したもののタイトルは、よく賛否が分かれる印象があります。実際に私も原作のタイトルの方が好きなことがありました。
でも、この作品は私はどちらのタイトルも好きです。


原題のタイトル「Challenger Deep」は、一見シンプル過ぎるようにも思います。

マリアナ海溝最深部を指す「Challenger Deep」。読み終わってみると、簡潔なだけでなく、主人公の奮闘と、精神疾患の海の深淵を連想させるタイトルだと感じました。


一方の邦題、「僕には世界がふたつある」は原題と全く違うタイトルでありながら、内容の気になる魅力的なタイトルです。私はタイトルに惹かれて、この本を手に取りました。読後に納得する原題に対して、読む前に想像を誘う邦題です。
金原瑞人さんと西田佳子さんの共訳なので、どちらかもしくは相談してなのかは分からないですけれど、お二人の翻訳本をまた探してみたいと思います。

ストーリーは、邦題の通り、ふたつの世界をもつ主人公ケイダンの話です。ひとつは現実、もうひとつは精神疾患の海を航行する船の中...。
私は、あらすじを読まずに読み始めたため、中盤まで彼が精神疾患だと思わずに読んでいました。カオスで不安ながらも読み進めずにはいられない、不思議の国のような世界です。終盤には、現実と混じったり、どういう結末に至るのか不安で堪りませんでした。しかし、納得のいく結末で、物語に関する著者あとがきもあり、物語としても、精神疾患の世界を知る書籍としても、とても満足な作品です。
ただ、Brendan Shustermanのイラストが巻頭と巻末に固めてあることだけが、やや不満でした。もっと挿し絵らしく、物語の中に混ぜ込んで欲しかったです...。

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