2017年12月9日土曜日

多感な少女の多彩な世界【望むのは】<感想(ネタバレ控えめ)>

主人公がすごく感受性が豊かな女の子で、古谷田奈月さんの表現力の広さと深さを感じる話でした。15から16歳になる多感な少女の、友だち・恋愛・大人・世界といった様々なことへの複雑な想いが多彩に描かれていて、読み終えた後はほっこりします。
私は、こんなに色彩豊かに世界が見えていたわけじゃないけれど、高校生の頃を思い出しました。あの頃の何とも言えない想いを表現してもらったようにも感じて、少し嬉しい気持ちにもなります。
ネタバレしたくないので、ハッキリは書きませんが、今回はややファンタジー要素のある世界です。凄くインパクトのある設定なんですが、物語の中では、そのインパクトほど大きな問題ではありません。話そのものは、思春期の少女の葛藤で、ファンタジーではありません。それでも、この要素はとても重要です。この要素があることで、愛や友情といった人間関係を普段とは別の視点から考えさせられます。俗っぽい言葉を使えば、この愛を一言で表すことも出来るけど、そんな言葉には収まりきらないくらい、暖かくて優しい話です。
また、この作者が描く「父と子」の関係が凄く好きなんですが、今回は表面的にはほとんど描かれていません。少し残念だったのですが、実は、ある登場人物の言動の原因に父への想いがありました。今回も物語の裏側に「父と子」が描かれていたんです。作者の表現力の幅の広さに、ホントに感嘆します...。

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