2018年9月14日金曜日

アガサ・クリスティな近未来ミステリ群像劇【グラスバードは還らない】<感想(ネタバレ控えめ)>

「ジェリーフィッシュは凍らない」に始まる<マリア&蓮>のシリーズ、第三作目。

前二作とも、鮎川賞受賞作というかなり凄いシリーズで、気になっていたので、まだ既刊の二作を読んでいないのに、つい買ってしまいました...。
でも、後悔はしてません。
東大出身の作家さんというのは、伊達じゃないです...。

推理トリックも、物語も、滅茶苦茶作り込まれていて、エピローグになるまで、私は事件の真相が分かりませんでした。

<以下ややネタバレあり>
第一作目の「ジェリーフィッシュ」の紹介で、ミステリの巨匠アガサ・クリスティの作品に例えられていますが、今回もアガサ・クリスティを連想させられます。
...ホントは、私はまだアガサ・クリスティ作品を読んだことはなくて、大まかな作風を聞いたことがあるだけなんですけど...(笑)

とにかく、大袈裟でなく、凄いミステリ作品なんです。
ネタバレを避けたいので、具体的には書きませんが、読んでいただければ、私の言いたいことは分かって貰えると思います!

また、「近未来」な舞台で、設定も細かく丁寧です。
巻末に参考文献も挙げられていたので、かなりリアルな「近未来」なのではないかと思います。

それから、登場人物たちの人間模様ですが、これはシリーズモノのミステリには珍しく、被害者たちの心理描写に重心があるような印象を受けました。
推理パートは、充分に面白いのですが、それまでの事件の様子、事件の中での疑心暗鬼、最後に明かされる犯人の動機に関する描写が、深く丁寧に表現されていています。

つまり、近未来ミステリ群像劇です。

娯楽的なミステリには収まりきらない、とても考えさせられる小説でした。

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