2018年9月16日日曜日

人と人の間の想い【きみとぼくの壊れた世界】<感想>


「不気味で素朴な囲われた世界」と同時刊行された西尾維新作品です。
こちらもミステリですが、こちらの主人公は高校生です。

「囲われた世界」は美少年シリーズを連想しましたが、「壊れた世界」はしいて言うなら、
<物語>シリーズが近いと思います。


作品そのものは、伝奇系ではないのですが、主人公が阿良々木くんに少しだけ似てます。
阿良々木くんをもう少し誠実というか、ストイックというか、堅く理知的にした感じです。
ゲームのような選択肢を絞った思考をしたり、理性的かつ結果を重視した性格のようですが、変態チックな部分もあります。

また、ストーリー自体は「囲われた世界」より、恋愛要素が強く、生々しい描写も多いです。
ただ「囲われた世界」はグロの描写が生々しかったので、もしかするとそれぞれでエロとグロで差別化されたのかもしれません。

他に主人公の性格や年齢の違いもあると思いますが、私は恋愛や友情といった人と人の間の想いを描いたのが「壊れた世界」なのだと思います。
限られた情報の中で、周りを慮り、最善を探す主人公は、合理的な考え方を持っていますが、苦悩も後悔もします。
ただ失敗したとしても、そうやって少しでも良い方向に進もうとするのは、生きていく中で必要なことだと思います。
作中で、ミステリ用語の説明や作品の話が出てくるのも面白いです。
そういうこともあってか、「囲われた世界」がタイトル通り、「箱庭」や「密室」のような、ある意味作品の中で完結した世界観であるのに対し、「壊れた世界」は現実との地続き感がありました。
「囲われた世界」の説明的な部分もあるので、個人的には「囲われた世界」を先に読むことをオススメしたいです。
でも、講談社ノベルスとして、刊行の際はこちらが1巻のようです。
ただ、どちらを先に読んでも、そこまで大きな問題はないと思います。時系列の後先はあるようですが、ハッキリと書かれているわけではないので、多分ネタバレにはならないと思います。

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