2018年9月27日木曜日

少し大人向けの『かがみの孤城』【スロウハイツの神様(下)】<感想>

恥ずかしながら、大泣きしました...。
特に最終章は嗚咽を押さえられなかったです。
家で読んでいて、よかった...。

綺麗事だけでは生きられず、弱さや後ろめたさなど、いろいろと腹の中に抱え、衝突したり、すれ違ったりしながらも、生きていくクリエイター達。
彼らのその腹の中のドロドロを美しく優しく描いた作品だと思います。
全体的な雰囲気は本屋大賞受賞作品「かがみの孤城」を連想させます。
あちらは登場人物が中学生でファンタジーでもあったことを思えば、こちらの方が大人向けかと思います。
この作品の登場人物たちは主にクリエイターとして、働いている大人で、ジャンルもしいて言えば、ミステリーです。
推理小説とは違うのですが、上巻が問題編で、下巻が解決編です。
上巻感想
ミステリ的なので、ネタバレは避けたいのですが、私が泣かされた、3つの好きな場面について少しだけ...。
まずひとつは、妹の桃花から語られる環の過去。
上巻でも語られていた環の生い立ちですが、妹というより近い視点から描かれることで、息が吹き込まれたように、詳細かつ鮮明に描かれます。
やっぱり辻村深月作品の母娘は重々しいです...。
そんな中、図書室にチヨダブランドが置かれる場面が好きです。
ある出来事がここで起きていたことが物語の終盤に明らかになるのですが、思わず私は嗚咽が漏れました。
次に、スーの迷走の末路。
一言だけ言わせてもらうなら、「羨ましい」。
ただただ心からスーが羨ましいです。
彼女はなんて素敵な友達をもったんだろう。
本当に羨ましくてたまりません。
ただ妬ましくはなく、憧れるという意味で羨ましいです。
そして、最終章で語られる例の事件後のコウちゃん。
いくつか残った不自然な謎がここで明かされ、コウちゃんのいくつもの台詞の裏にあった真意にも気づかされます。
正直、興奮が止まらず涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながら、読み進めました...。
人により好みは分かれることもあるかもしれませんが、読み終わった今、私は凄く穏やかな気分です。

外伝に「V.T.R.」という作品もあるので、そちらも読もうと思っています。

あと、私は以前読んだのですが、「ハケンアニメ」という作品も同じ世界の話のようで、コウちゃんもチラッと登場します。

また、解説は西尾維新さんです。
チヨダブランドに何となく西尾維新作品を連想していたので、びっくりしました。
でも、解説の内容はご自身の作品のあとがきのような親しみやすい雰囲気とは異なり、カッチリしています。
これはこれで面白かったですけれど、個人的にはもうちょっと感情的な文章も読みたかったです。

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